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図書館のすすめ

johnny-osoro

 図書館が勉強に向いている、ということを言いたいのではない。受験勉強に向いた場所というのは人によりけりだろう。一番大事なのは気持ちであって、十分なやる気があればどこで勉強しても大きい差はない。逆もまた真だ。そうではなく、図書館の良いところは勉強に飽きたら本を読めるところだ、ということがポイント。さらに言えば、それが偶然の発見につながるということである。

 偶然の発見が持つ力はいろいろと言われているが、その中の一つに、自分への理解度を高めるというものがあるだろう。これはとても大切だ。なぜなら自分をよく理解している人は成熟するし、自己を参照点にして他者を見ることができるから、視野が広く、思いやりを持ちやすい。これらがまとまって、その人の魅力になるからだ。自分の得意・不得意や何に興味を持ち、何に惹かれないのかを知るには、この偶然の発見を頼りにするほかない。

 あらゆるジャンルの知識が手を伸ばせば届く距離に転がっていることで、図書館は偶然の発見を生む装置として機能している。僕自身、図書館でセレンディピティを体験したことが何度もある。

 例えば高校生だった当時、背表紙を眺め、グッとくるタイトルやその字体を見つけては借りて読む、という乱読を繰り返していた。その中の一冊が『ムーン・パレス』というポール・オースターの小説で、ここから翻訳者の柴田元幸先生の存在を知り、そしてこれが大学の進学先を決めることになる。この本が自分の適性や興味関心を捉える契機になり、そしてこれをもたらしたのは、あの日あの時あの場所で、当てもなく本棚の間をうろついたことだった。何かが一つでもずれていれば、自分の人生は全く違ったものになっていただろう。

 もちろん、本以外にも自分について知る契機はたくさんある。数ある契機の中で、手軽に手に入れやすいものとして図書館の本を取り上げるのは、悪くない考えのはずだ。









 
 
 

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