Aldous Huxley, "Brave New World"より
the appalling present, the awful reality-but sublime, but significant, but desperately important precisely because of the imminence of that which made them so fearful.
「確かに現在は厭わしく、現実はおぞましいーーーけれども、嫌悪を催すほど切実なものであるからこそ、この現在の現実はすばらしく、意義深く、この上なく大切なのだ。」
(訳:黒原敏行『すばらしい新世界』光文社)
『すばらしい新世界』は、楽園を装った地獄を描くSF小説。あらゆる人生の障害を取り除いた社会が実現するが、皮肉にも、それによって人生が生きるに値しなくなることを訴える。苦難に満ちているからこそ、人生は全力で挑むに値する、ということ。
自分の人生観に深い影響を与えた一文。
★ タイトルのbraveは「すばらしい」で、この意では限定用法でのみ使う。
★ 引用部は直前のthe present, ... realityという二つの名詞の同格を表す部分。【名詞, 名詞】、【名詞―名詞】、【名詞:名詞】という並びの場合、片方の名詞がもう片方を説明している。
★ 英文のダッシュ(「―」)は和文でもそのまま使われることが多い。ダッシュは、主に直前の語句の補足説明に使われる。今回は、the appaling present, the awful realityについての説明を導いている。
★ butの直後にit isを補って読むとよい。itが指すのはthe appaling present, the awful reality。
★ 書き手の重点はbutの直後に置かれる。今回はbutを3回繰り返すことで、現在の現実こそ重要であることが最高度に強調されている。
★ precisely because SV~は理由を強調する表現。It is precisely because SV~ that ...という強調構文と組み合わせて使われることが多い。
★ the imminence of thatは名詞構文で、that is imminentという節に直すと分かりやすい。imminent(形)は「切迫している」。訳された黒原先生はこれを「切実」と的確に表した。
★ that whichは、現代のwhatに当たる表現。まとめると、ここはbecause what made them so fearful is imminent「現実を恐ろしいものにしているものが、切実だから」と読むべきところ。
★ made them so fearfulはmake OC「OをCにする」の構文。
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