僕は中学の頃台北に住んでいた。日本人学校のクラスメートで宇都宮くんという仲の良い友達がいた。ある時、僕と宇都宮くんの両親が日本に一時帰国して、二人で夕飯を食べようという話になった。日本人街はまあまあ高級な地区にあり、周りにはおしゃれなお店がたくさんあった。そのなかに普段なら友達同士では行かないような、高そうなアメリカンダイナーがあった。
緊張してお店に入る。ウェイターがテーブルに案内し、僕たちが日本語を話していたからなのか、メニューの説明を英語で始める。Ahaと相づちを打ってなんとか受け流し、二人で同じ一番安いコースを頼んだ。
注文をメモしたウェイターが最後に言った。「スーパーサラダ」。僕は店員が味を保証しているんだと思い、笑顔で「OK!」と返した。ウェイターがまた言う。「スーパーサラダ」。OK!とまた返す。ウェイターがまた言う。「No, スーパーサラダ」。
困惑した顔で宇都宮くんを見ると、彼も困惑した顔で僕を見ていた。しばらくの沈黙ののち、僕の脳裏に突然、英語のリンキングの話がよぎった。彼が言っていたのは「Super salad」ではなく、「Soup or Salad?」だったのだ。
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